「Thelonious Monk」特集

 Brilliant Corners / Thelonious Monk
アルバム名   Brilliant Corners
アーティスト   Thelonious Monk
製作年   1956
レーベル   Riverside
レコード番号   OJCCD-026-2(輸入盤)

 新しいミレニアムにも通用する、極めてオリジナリティの高いアーティストという意味で、今月はセロニアス・モンクを特集してみました。というわけでまずは彼の最高傑作との呼び声も高い「ブリリアント・コーナーズ」というアルバムを紹介します

 セロニアス・モンクという人は何とも独特な、くせの強いピアノを弾く人なので、ジャズ・ジャイアントの一人でありながらシロートにはなかなか取っつきにくいアーティストでもあります。実際、有名なジャズ評論家とかも以前は「こんな下手くそなピアノを弾く奴は、うんぬん」などと言っていたんだそうです。評論家ってのもあまりアテにはならないね(評論家未満の私の言葉なんぞもっとアテにならない、という自己否定でもあるね、これは)。

 このアルバムは、以前「初心者向けジャズ講座」で紹介しているんですが、そこにも書いたとおり「(彼オリジナルの)変だけど素晴らしい音世界」が堪能できるアルバムです。ピアノトリオもいいかな、と思ったんですが、あまりにオリジナルすぎるので、ホーンが2本入っている方が初心者には取っつきやすいかな、と思って選んでみました。そのうち一人はモンクと比べたらずっとわかりやすいソニー・ロリンスだし、これならいいか、と思ったんですが、それでも充分に「モンクの世界」が展開されています。ロリンス、思いっ切りモンクの世界に引きづりこまれてます。しかしまあそれはそれでかっこいいので良しとしておきます。



 Monk's Music / Thelonious Monk
アルバム名   Monk's Music
アーティスト   Thelonious Monk
製作年   1957
レーベル   Riverside
レコード番号   VICJ-60309

 もしもどこかで「訳がわかんないけど何ともカッコいいジャケット」大会があったら、ソニー・ロリンスの「Way Out West」と並び、選ばれるであろうアルバムがこの「モンクズ・ミュージック」でしょう。この紹介写真ではよく分からないと思うんですが、パリッとしたスーツを着たモンクが赤鉛筆を右手に、ちびたタバコを左手に持って、渋い顔をしながら子供用のカートに乗っているんですよ。すごいでしょ? ホントに格好良すぎるぜ、モンク。

 このアルバムは、このおかしなジャケット同様、いわゆる常識からハズレた音楽が展開されていきます。まず、賛美歌の「主よ、ともに宿りませ」で始まると、その最後の部分にモンクのピアノが入り込み、そこから名曲「ウェル、ユー・ニードント」が始まります。このアルバムのこの曲は「偉大な失敗曲」として特に有名です。というのも、モンクが自分の最初のアドリブの最後の部分で「コルトレーン!コルトレーン!」と2回叫んでいるために、びっくりしたドラムのブレイキーとベースのウェアが間違えているんです。その叫び声はCDでも聴けるんですが、話によると、演奏中に睡魔に襲われウトウトしていたコルトレーンを起こすためだったとか。自分が演奏してないからって、寝るなよ、コルトレーン(笑)。

 こういうミスがあると、通常は取り直しということになると思うのですが、このアルバムは取り直ししてません。でも素晴らしいんですよ。上に紹介した「ブリリアント・コーナーズ」は完璧な演奏で「傑作」と呼ばれているんですが、ミスがあっても素晴らしいものに仕上がっているこちらも、それでもすごい、という意味で「傑作」だと思います。そのミスもモンクの音楽世界の不思議さを表すエピソードとして考えれば、なんだか納得できますしね。