「俺の心の叫びを聞け!」特集

 We Insist! / Max Roach
アルバム名   We Insist!
アーティスト   Max Roach
製作年   1960
レーベル   Candid
レコード番号   VICJ-2227

 21世紀最初のお正月に紹介すべきモダン・ジャズのアルバムは何か。どんなアルバムで新世紀を迎えるか、ちょっと考えてみたんですが、やっぱここは帝王マイルス? それともファンキーな感じ? ビル・エバンスできれいにってのもアリだな、とかいろいろ考えたんですが、なぜか自分が手にしたのは極めて思想性の強い、マックス・ローチのこのアルバムでした。

 マックス・ローチは、クリフォード・ブラウンとの双頭クインテットで一躍有名になったドラマーです。クリフォードの死後、さまざまな新人ミュージシャンを加えながらバンド活動をしていましたが、1960年代に入り、多くの思想性の強いアルバムを発表するようになりました。「ウィ・インシスト」というアルバムは、そうした作品の最初のものであり、大きな衝撃とともに世間に迎えられたのでした。

 この作品は、アメリカで黒人の公民権運動が高まりを見せ、有名なワシントン大行進がスタートした3日後に録音されたアルバムです。タイトルを見てもわかるんですが、このアルバムは『ブラック・パワー』に対するマックス・ローチによる応援歌的な意味を持っています。そうした政治的な意味合いを抜きにしても、このアルバムで聴くことが出来るアビー・リンカーンのボーカルは孤高で力強くて美しく、聴くものを圧倒します。日本の政治も混沌としてますけど、このくらい力強いステイトメントを発することが出来る人間がいれば、多少変わってくるのになあ、と思いながら聴きました。



 In Greenwich Village / Albert Ayler
アルバム名   In Greenwich Village
アーティスト   Albert Ayler
製作年   1967
レーベル   Impulse
レコード番号   MVCJ-19050

 上に紹介した「ウィ・インシスト」は、多少おどろおどろしいフレーズやアビー・リンカーンの叫びとかあったとはいえ、まだ誰の耳にも音楽として受け入れてもらえるレベルのものでした。しかしその7年後に録音されたこのアルバート・アイラーのアルバムは、フリー・ジャズの名盤といわれているだけのことはあり、もうなんだかわけのわからない奇妙な音のオンパレードとなっています。

 アルバート・アイラーという人は、オーネット・コールマンがフリー・ジャズというジャンルを作って以来、サックス奏者としては最もラディカルな(わかりやすくいえば最もはちゃめちゃな)演奏をした人物です。コルトレーンも晩年は(シロートには)訳の分からない演奏をしてましたが、彼の演奏はアイラーに影響を受けたものだといわれています。アイラーには「魂の歓びに始まったジャズは魂の歓びで終わるべきだと思う」という名言がありますが、これを実際に音楽で表し、最も成功しているのがこのライブ・アルバムだと思います。

 アイラー兄弟の金管楽器に数多くの弦楽器が加わり、とにかく濃密な即興演奏が繰り広げられているこの作品は、たぶん普通の人の音楽の概念を根底から覆す音楽だと思います。人によってはただのノイズにしか聞こえないかもしれません。そんな作品を『初心者向け』を謳うジャズのサイトで紹介するのもいかがなものかと思いましたが、混沌としている新世紀を表現するアルバムであるというこじつけでお茶を濁しておきたいと思います。しかしこのアルバム、たまに聴くのはいいけど、今レビューを書こうと思って3回ほど連続で聴き直したらちょっと頭が痛くなってきた。あー、こりゃ絶対に初心者向けじゃないや。ということで、今回のオススメアルバムは反面教師としてご利用下さい。ひとつよろしく。