“シカゴ・ジャズ・シーン”特集

 Flamethrower / The Chicago Underground Trio
アルバム名   Flamethrower
アーティスト   The Chicago Underground Trio
製作年   2000
レーベル   delmark records
レコード番号   PCD-24029

 シカゴのジャズといえば、初期のルイ・アームストロングなどから推察できる『洗練される前のスウィング系ビッグバンド』みたいなものを想像される方も多いのではないかと思います。今もシカゴに行くとそういう音楽を聴かせてくれるお店がそこそこありますし、またそうした音楽はそれなりに人気も博しているようです。しかしここで取り上げる『シカゴのジャズ』はそうした古いタイプのものではなく、近所にあるデトロイトのクラブ・シーンの影響を受けつつ独自の発展を遂げた新しい音楽のことであり、ジャズを構成するさまざまな要素に新しい解釈を加えて作り出された音楽に焦点を当ててみました。

 まずは去年発売になったシカゴ・アンダーグラウンド・トリオの新作『フレイムスロワー』。もともとこのユニットは、コルネット・ベース・ドラムスの3人組から成るバンドだったのですが、前作でゲスト参加していたギターのジェフ・パーカーが今作から正式にメンバーとなり、4人組ながら「トリオ」を名乗るバンドが誕生したようです。ちなみにジェフ・パーカーは下で紹介しているトータスの新しいギタリストでもあり、シカゴ・ジャズ・シーンの重要人物の一人でもあります。というのも、シカゴ・ジャズ・シーンがとても小さいからという理由でもあるんですが。

 今回収録されている15曲は、昔ながらの4ビート・ジャズ(っぽいもの)やらフリー(っぽいもの)やらジャズロック(っぽいもの)やらがごちゃごちゃに入り交じり、またアコースティックもエレクトリックも同等に取り入れられています。ジャズという音楽は、歴史的に見ていろんな音楽の「いいとこ取り」をしながら発展してきたものであると私は認識しているんですが、それが前世紀末から新世紀にかけてという時代のフィルターを通すと、こういう音楽が出来上がるのだな、とこのアルバムを聴くとミョーに納得できます。もちろんそこには場所的な影響もあるんでしょうが、こうした音楽がもうちょっと頻繁にメインストリームでも取り上げられるといいのになあ、と若干無念気味に思っていたりします。



 TNT / Toutoise
アルバム名   TNT
アーティスト   Toutoise
製作年   1998
レーベル   Thrill Jockey Records
レコード番号   TKCB-71338

 トータスは、ステレオラブのプロデュースやブラーのリミックスなどで名をはせた(らしい)、ドラムス&パーカッション&キーボード奏者のジョン・マッケンタイア率いる、シカゴの今どきのジャズ・バンドです。その他にはパーカッション×2、ギター、ベースといったメンバーで構成されていますが、ちょっと普通のジャズとは明らかに違っていて、それはこのアルバムがハードディスク・レコーディングを駆使して作られたからという制作面での方法論的な理由によります。

 彼らの音楽は、前例があまりないためにどう説明していいものか実はよくわかっていないのですが、どちらかといえばジャズと言うよりクラブ系の音楽に近い気がするし、それよりもミニマルな現代音楽に近い音楽だと思います。そしてそこにヒーリング的な要素を足したような、もう本当になんと表現していいのかわからない「味」があります。インプロビゼーションは(一聴した限りでは)ほとんどなくて、これがジャズといえるのか私には全然自信がないですが、まあ偶然生まれた音を編集して使っていたりするあたりにジャズっぽい要素もあるかな、ということでここで紹介してしまいました。

 メンバーの一人がCD-Rに付いていた紙に書いた落書きをそのままジャケットにしてしまったという今回のアルバムは、その脱力ぶりとは裏腹に、モーレツに密度の濃い作品に仕上がっています。ミニマルな音を何層にも重ねた、全体的に柔らかくて心地よいタイプの音楽なのですが、聴けば聴くほどその奥深さにはまり込みます。.....と書きながらアルバムを再度聴き直しているんですが、これはホントに現代音楽としても名作なんじゃないかと思っちゃうなあ。武満徹が生きていたらどういう評価を下しただろうか、これを聴きながら想像するのもそれはそれで楽しいものですね。