“(無理矢理)ギター”特集

 Paseo de los Castanos / Tomatito
アルバム名   Paseo de los Castanos
アーティスト   Tomatito
製作年   2001
レーベル   EmArcy
レコード番号   014 313-2(輸入盤)

 去年、ミシェル・カミロと共作した「スペイン」でジャズ・ファンにも一躍その名を知られることとなったフラメンコ・ギターの名手、トマティートの新作です。ラテンの男としての色香をプンプンと臭わせるルックス(と胸毛)で女性からの人気も絶大のようですが、哀愁漂うギターは男性が聴いてもぐっとくること間違いなしの美しさです。

 このアルバムでは、タンゴやボレロやルンバといった、いろんな種類のラテン音楽をギターと手拍子(クラヴェっていうんでしたっけ?)とボーカルで表現しています。ライナーノーツによると今までのトマティートとはひと味違う演奏らしいのですが、それ以前の作品をあまり聴いていない私にはよくわかりません。しかしそのどれもがかっこよくて、この熱さと渋さが夏の夕暮れにとてもしっくりくる気がします。

 ちなみにこのアルバムは、東京に遊びに行ったときにジェイさん宅で聴かせてもらい、あまりに素晴らしかったのでその後買って自宅に帰った作品です。そして自宅で母親にも聴かせたところ(この田舎のおばちゃんは、生意気にもトマティートの生演奏を聴いたことがあるのです。俺も聴いたことないっつーのに、ふざけやがってぇぇっ!)、聴いたことあるはずの演奏にはピンとこなかったようですが、「おお、ギターの人、そういやこんなぐしゃぐしゃって髪型してたわ」とジャケットには敏感に反応していました。え、それしかわかんないの?あんた音楽を聴きに行ったんと違うんかいっ!と軽くツッコミを入れたい気分になりました。



 Ciudad de las Ideas / Vicente Amigo
アルバム名   Ciudad de las Ideas
アーティスト   Vicente Amigo
製作年   2000
レーベル   Ariola
レコード番号   BVCP-21122

 トマティートもラテンの色男という風貌をしていますが、ビセンテ・アミーゴも負けず劣らずのハンサム野郎として世界中の婦女子から黄色い声援を浴びまくっています。私が知り合いからいただいたこのアルバムにも彼のブロマイド写真が入っていて、ちょっとビビッたほどです。アイドル扱いっすね。しかしビジュアルには大して興味のない私にも、彼のポップなセンスを前面に出したフラメンコ・ギターはとても気持ちよく響きます。

 ビセンテ・アミーゴは多くのポップス系ミュージシャンとも共演を果たしてきたようですが、並んでいるメンツを見るとブラジルのミュージシャンが多いようです。そのせいだろうと思いますが、どことなくブラジルっぽい軽やかさが曲全体にあって、その辺も聴きやすさにつながっている気がします。といっても決してフラメンコの域を超えた演奏ではなく、そういった要素が全てうまくミックスして『ビセンテのフラメンコ』というべきものを構築していて、多くの人にフラメンコ入門としてぴったりの演奏を聴かせてくれています。

 しかし、ビセンテもトマティートも、ビジュアルがかっこいい上に男も惚れてしまうほどの色気もあって、さらにギターもうまいってのはなんかずるいよなぁ。それはもちろん「持たざるもののひがみ」でしかないのは十分承知していますが、それでももう羨ましいを通り越して呆れてしまうような気分になります。できることなら彼らにはすごい運動音痴、とかめちゃくちゃ足が臭い、とかそういう欠点があってほしいものだ、と願わずにはいられません。



 武満徹ギター作品集成 / 鈴木大介
アルバム名   武満徹ギター作品集成
アーティスト   鈴木大介
製作年   1997
レーベル   Fontec
レコード番号   FOCD9114

 今月末から、松本市で恒例の『サイトウ・キネン・フェスティバル』が開催されます。メインのオーケストラやオペラはチケットを発売して2時間もしないうちに全席完売しちゃうんですが、武満没後にスタートした追悼コンサートは、その音楽が難解だと思ってしまう人が多いせいか、ありがたいことになかなか売り切れることはありません。私のような「行列が大っ嫌いだけどいい席でコンサートを楽しみたい人間」にとってはこれはとてもありがたい事態なのですが、武満の魅力が理解されていない現状というのはファンとしてなかなか許せないものがあるので、ここにもう一枚紹介してしまうことにします。

 このアルバムには、武満がギターのために書いた曲と、クラシック・ギターのために編曲した、合わせて26曲が収められています。そのうち「ギターのための12の歌」という作品は、ロンドンデリーの歌とか早春賦とかサマータイムとかヘイ・ジュードとか、本当に幅広いジャンルの歌が武満流に編曲されたかたちで取り上げられており、武満徹という人がいかにクラシックだけに凝り固まってしまうような偏見からは遠い場所で音楽活動を展開していたのか理解できます。彼が作曲した曲は、多少難解に響くものもあるかもしれませんが、もちろん素晴らしいです。

 演奏している鈴木大介氏は、前述の2人に比べるとビジュアル的にはもう完膚無きまでに叩きのめされた感がありますが、クラシックのギタリストとしては国際的にもとても高い評価を受けている(らしい)人です。このアルバムでも武満の繊細な世界をとてもよく表現していると思います。彼は今度のサイトウ・キネンに演奏者としてやってくるそうで、それはかなり嬉しかったりしています。おかげさまでなかなか良い席もゲットできたことだし、当日はたっぷり楽しんでくるつもりです。