ます最初に断言しておきますが、このジャケットを見てこのアルバムを即買いした私は、本質的なところでとてもセンスの悪い人間だと思います。だってこのジャケット、真っ白なスーツに身を固めたアルフォンス本人が、黄昏時のニューヨーク(であろう街並み)を望むマンションの一室で、グランドピアノを前に、右手にバラの花束、左手には「Lover」という言葉にべっとりとキスマークが付いたカードを手にして立っている(しかも超真顔)というものなんですから! しかもその後このデザインを手がけたのがアルフォンスその人であるとわかり、個人的には狂喜乱舞しながら爆笑しました。すごいぞ、ムーゾン! かっこよすぎるぜっ!

 アルフォンス・ムーゾンという人について、実は私はあまり詳しく知らないのですが、以前買った1970年代のエレクトリック・ジャズを集めたコンピレーションアルバムの中にかなり気に入った彼の曲があり、長い間ちょっと気になる存在ではありました。で、マニラに滞在していたときに1996年に発売されたこの作品を偶然見つけ、安かった上にこれほどパワフルなジャケット(しかもタイトルが「ディスタント・ラバー」ときたもんだ!)はしばらくお目にかかったことがないと思い、即レジに走りました。全ての収録曲は彼の手によって作曲されたものであり、しかし相も変わらず1970年代と全く同じテイストのものでした。しいて言えばより一層ディスコチックになっているという、ある意味極めて反動的な内容に、私はまた笑いを止めることが出来ませんでした。

 しかし驚くべきことに、これほど時代に逆行した音楽なのにも関わらず(ま、逆にそれが新鮮な印象を与える面も否定できないけど)、参加ミュージシャンは恐ろしいほどに豪華なのです。ハービー・ハンコック、スタンリー・クラーク、リー・リトナー、マイケル・ブレッカー、フレディ・ハバードなどなどなど。これほど豪華なメンツを用いてこんな『70年代ど真ん中』な音楽を作ってしまうアルフォンス・ムーゾン、もうさすがとしか私には形容できません。まるでハリウッドの一流スターが大挙して出演しているB級コメディ(C級かも)、みたいな印象を与えてくれます。一流ミュージシャンをこれだけもったいない使い方が出来るなんて、このアルバムはある意味ですごくゴージャスな作品ですね。これこそアルフォンスの人徳のなせる技だな、と感心しています。

 ちなみにこのアルバム、1970年代のディスコ・サウンドが好きな人達にとってはそんなにひどいアルバムということはないと思います。ただ世紀末が近づきつつあった混沌とした時代に、豪華なサイドメンと発達したテクノロジーを使って、これほどベタで(しかもある意味)ちょっと下品なアルバムを作ってしまったという点に、私は彼の『ディスコ・バカ一代』な魂を感じずにはいられません。というわけで普段ならこのアルバムはこの場に登場しないはずなんですが、今日は「四月バカ」の日ということで紹介してしまいました。明らかにB級以下の作品ですが、お金に余裕のある人にはぜひ試してもらいたい1枚だと思っています。