世の中には、夏になるとチュー●とかビー●とかいうのを聴いて喜んでいるような頭の弱い輩も多数いるようですが、夏に聴く音楽といえばもちろんラテンでしょう、というのは、私の中ではゆるぎない常識として定着しつつあります。ひとくちにラテンと言っても、タンゴとかマンボとかサルサとかチャチャチャとかいろいろあるんですが、今回は『ルンバの王様』ザビア・クガートのベスト・アルバムを紹介します。

 スペイン生まれでキューバ育ちのザビア・クガートは、もともとはクラシックのバイオリン奏者だったらしいのですが、「いいバイオリニストだが偉大なバイオリニストではない」という新聞の評によりバイオリニストとしてのキャリアを諦め、アメリカの(そしてひいては世界の)大衆音楽の世界で成功を収めた人です。当時のアメリカ人はラテン音楽にはあまり興味がなかったらしいのですが、彼らにラテンで踊る楽しさを初めて知らしめたのが、このザビア・クガートだったのだそうです。しかし最初の頃は「リズムに乗れない・聞く耳も持たない」アメリカ人のために、オーケストラのフロントには美女を並べていたんだそうです。ちなみに彼は、そのうちの5人と結婚したのだそうです。まあなんてうらやましい。

 このベスト・アルバムでは、彼のバンドのテーマ曲である「マイ・ショール」はもちろんのこと、「テキーラ」とか「ベサメ・ムーチョ」とか「タブー」とか「クンバンチェロ」とか「ブラジル」とか「アマポーラ」といった、ラテンの名曲がこれでもかっ!というくらい収録されています。しかもその全てが名演奏であり(特に「テキーラ」は、僕が今まで聴いた全『テキーラ』の中でこれが一番いいと思います)、そしていつもは私が聴いている音楽をやかましがっている父親も「これは懐かしいなあ」と聴き入ってしまうほどに万人に受ける演奏でもあると思います。まさにラテン初心者が最初に買うべき一枚であり、そしてこのアルバム1枚だけでも、充分に夏を乗り切れるだけの名作です。

 ちなみにここで紹介しているザビア・クガートの「ルンバ」は、ダンス音楽として広く世間に知られているルンバであり、本来の「アフリカ伝来の激しいリズムで男性が踊りまくるキューバの伝統的なダンス音楽」ではありません。もしも初心者の皆さんがルンバのアルバムを買おうと思ったら、この『ザビア・クガート』の作品を買えばまず間違いないでしょう。そうすれば(いい意味で)とってもステレオタイプなラテン音楽を聴くことが出来ますし、したがってひと夏をノーテンキに過ごせます。今年の猛烈な暑さに参ってしまった人もたくさんいると思いますが、そんな人にとってこの1枚は『丑の日の鰻』的パワーを与えてくれると思いますよ。