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相変わらず寒い日が続いています。しかし冬のどうしようもなく寒い日は天気がいいことも多く、そういう空気がピリッとした晴れの日には、意外にボサノバなんかがしっくりきます。冬に聴くボサノバは、もちろん小野リサのようなのほほんとハッピーになれるタイプでも悪くはないんですが、もっと枯れきった感じで心にしみてくるやつか、パンチが効いたタイプのボサノバが、個人的にはたまらなくしっくりきます。そんなわけで、今回は欲張って、渋くて寂しげなんだけど、同時にパンチも効いているバーデン・パウエルとヴィニシウス・ヂ・モライスの作品を紹介します。
バーデン・パウエルは、ブラジルが生んだワン・アンド・オンリーなギタリストです。彼が頭角を現してきたのが、ボサノバが流行し始めた時代と重なることもあり、バーデンは一応ボサノバのギタリストというカタチでくくられていますが、いわゆるボサノバ・ギターよりも力強く、(特に若い頃の作品は)お洒落なのに野性的な感覚も漂わせています。今回共作しているヴィニシウス・ヂ・モライスという名前は聞いたことがない人も多いかもしれませんが、『イパネマの娘』をはじめとするボサノバを代表する多くの名曲の作詞を手がけた人物であり、ボサノバ時代の偉大な詩人でもあります。しかし本業は外交官であり、このアルバムを作る直前にはフランスに赴任していて、そこにバーデンを呼び寄せて音楽活動などをしていたのだそうです。で、帰国した2人はブラジルのバイーア地方を訪ね、ヨーロッパ的なお洒落なセンスと野性的でパワフルなバイーアのリズムをミックスさせ、アフロサンバと呼ばれる彼ら独自の音楽を作り上げたのでした。
このアルバムは、こうした彼らの動きから必然的に生まれた音楽であり、したがって全て彼らのオリジナル曲で構成されています。その収録曲の素晴らしさはもちろんのこと、ヴィニシウスの書く歌詞の奥の深さにも唸らされてしまいます。といっても私はポルトガル語なんてわからないので、対訳を読んで思った感想なんですけどね。バーデン・パウエルはギターだけでなくボーカルもなかなか独特で素晴らしいんですが、さらに嬉しいことに、このアルバムのバック・コーラスはクアルテート・エン・シーという、わかる人にはわかるなかなか豪華な布陣で満足させてくれます。ちなみにこのアルバムの日本語版は、解説が秋岡欧、対訳が国安真奈という、これまたわかる人にはわかる人選だったりしています。
パワフルなリズムを持ったこのアルバムに少し寂しげなテイストを加えているのが、ときどき聞こえてくるフルートの音色です。古いアルバムなのでサイドメンに関する記述が全くなく、したがって誰が演奏しているのかわからないのですが、とにかくこのフルートが個人的には非常に気に入っています。葉が落ちた木を眺めながら聴いていると、その歌声とフルートがなんか心にじんわり来るんですよね。気分的には軽く「恋に破れ・打ちひしがれる男」というナルシスティックな雰囲気を演出できたりもします。私はあえて演出しませんが。というわけで、どうやってもジャケ買いはしそうにないほどショボいジャケットのアルバムですが、聴けば聴くほど味の出るアルバムなので、冬もボサノバを聴きたいという人は試してみるのも面白いかも、と思います。
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