この週末はオフ会のため、久しぶりに東京に出掛けてきました。いや〜、東京は理不尽に・そして殺人的に暑いっすね。冗談ではなく、新宿に着いて特急あずさを降り立った瞬間に今回の上京を後悔したほどです。もう2度と夏に東京になんて行くもんか、と心に誓ったほどですが(でももしかしたら訳あって次の週末も上京するかも........)、逆に帰郷して「涼しい高原の風にあたりながら上質の音楽を聴く」ということがなんという贅沢なのかを改めて思い知ったり出来ました。この喜びは東京人にはわかるまい、ふっふっふ。というわけで、今回紹介するのはそんな上質な作品のひとつである、マーヴィン・ポンティアックのベスト・アルバムです。

 マーヴィン・ポンティアックは、まさに伝説という言葉がぴったり来るブルース・ハープ奏者です。彼は精神を病んでいたらしく、その生涯を精神病院で過ごしたそうで、1977年にバスにひかれて死ぬまで・そしてその死後も彼の音楽はあまり大勢の人に聴かれることはありませんでした。またマーヴィン・ポンティアックの写真も「写真に撮られると魂を抜かれる」という彼の信仰上の理由からほとんど残されておらず、今回のジャケットに使われているひどくピンぼけした隠し撮りされた写真がほぼ唯一の写真なのだそうです。そしてこのアルバムは、最近彼と彼の音楽を「発見」したジョン・ルーリーが彼の遺作を1枚にまとめて発表したもので、通常のブルースとは違ったオリジナルな音楽を楽しむことが出来ます。

 ........というのは、基本的に全部嘘で、マーヴィン・ポンティアックなる人物は実際には存在しません。このアルバムで「マーヴィン・ポンティアック」として演奏しているのはジョン・ルーリー本人であり、曲も全てジョン・ルーリーによって書かれたものです。80年代に『フェイク・ジャズ』を標榜し、極めてオリジナルなジャズを作り上げてきたジョン・ルーリーらしく、このアルバムもいわゆるブルースのフォーマットからかなり大きく外れた音楽で、彼の強い個性を遺憾なく表現しています。全体的に曲のノリはゆるめで、そこにジョン・ルーリーの低く囁くようなボーカルが加わり、さらにまったりとした気分にさせてくれます。

 このアルバムはサイドメンもなかなか豪華で、マーク・リボーがギターを、ジョン・メデスキがピアノとオルガンを、そしてビリー・マーティンがパーカッションを担当しています。まさにジョン・ルーリー人脈による豪華布陣ですな。この作品はまさに『フェイク・ブルース』と言える内容で、実はあまりブルースらしい感じはしないのですが、逆にそこがめちゃめちゃかっこよく、私なんかはすっかりはまってしまいました。まあもともと私はジョン・ルーリーの比較的ディープなファンなので(彼のTシャツなんかも持ってたりするほど)、こういう言葉にあまり説得力はないんですが、一風変わった音楽を聴いてみたいという人は是非試してみるべきアルバムだと思います。