標高800mを超える高原地帯に住んでいる人間でも、ずっと同じところに住んでいると夏は暑いなあ、と感じるものです。そこで週末はもっと涼しい場所を求めて標高が1000mを超える山奥の村までドライブし、そこで滝を眺めるというまさに「滝フェチにはたまらん夏」を満喫しています(おかげで少し日に焼けました)。で、夏のドライブといえば昼間はボサノバとか聴きながら出掛けるのですが、夜はこんな『適度にノリが良くて適度に渋い』作品がかなりしっくりくるなあ、とまた新たな発見をしたところなので、ここにご報告させていただくことにしました。

 ケニー・ドーハムは、日本では「静かなるケニー」というアルバムが抜群の人気を誇っていたために、長いこと『バラード・プレイが信条のトランペッター』という捉え方をされていました。しかし実はアツいプレイが持ち味のミュージシャンであり、ロンドンあたりのDJが彼のアルバムをしばしば回していたのはかなり有名な話になってきていると思います。この『ウナ・マス』というアルバムも、そんなアツい一枚です。

 このアルバムは、当時40歳を目前に控えていたドーハムが、次世代を担う若手ミュージシャンと一緒に録音した作品です。後にドーハムのバックアップを得てデビューを飾ることになるジョー・ヘンダーソンや、デビュー作「テイキン・オフ」発売によって人気上昇中だったハービー・ハンコック、当時17歳にしてすでに天才少年と謳われていたトニー・ウィリアムスなど(ちなみにベースはブッチ・ウォーレン)、60年代以降のジャズシーンを牽引した名プレイヤーをバックに従え、「まだまだ若い奴らにゃ負けねえぜっ!」とばかりにブローしまくる中年おじさん・ドーハムのパワーが爆発しまくった1枚であり、特にタイトル曲のノリの良さは圧巻ともいうべきものがあります。

 ちなみに私が持っているアルバムは、アメリカ版のRVGエディションなのですが、このアルバムの最後にはLP未収録のバラードが収録されており(他のバージョンはどうなってるか知りません)、盛り上がった雰囲気を落ち着かせてきれいにエンディングを迎えます。しかしいつも思うのですが、マニア向けの商品というのはこの手の焼き直しが多くて困ってしまいますな。ジャズのアルバムでよくあるケースは「CD発売→未収録曲を追加→音質を良くして再発売」というパターンで、頭の弱いジャズファン(私ももちろん含まれてます)は、そのたびに買い換えたくなってしまい、そして実際にいくつかは買い換えてしまうので、まさにレコード会社の思うつぼにはまってしまうというわけです。しかしジャズファン以外からは「同じアルバムなのにどうして3種類も出てるの?」という質問をされることもよくある話で、レコード会社の皆さまにはその辺のわかりにくさを解消していってもらって、もっと初心者を取り込んでもらいたいものだな、とか思ったりもしています。