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6月になり、晴れた昼下がりにはボサノバが似合う季節になりました。東京あたりでは先月から『ボサノバ指数』は上がりっぱなしだったと思いますが、湿度も低くて過ごしやすい長野県中部地方ではそれほど高い値を示さず、今頃になって徐々に「ボサノバでドライブ」にぴったりな環境が整ってきたというわけです。今回はそういう事情からアストラッド・ジルベルトのゆったり楽しめる名作を取り上げてみることにします。
アストラッド・ジルベルトは、ボサノバを作り出した1人であるジョアン・ジルベルトの妻だった人です。彼らが結婚していた当時、ジョアンとアルバムを作ることになっていたスタン・ゲッツが彼らの家を訪ね、そこの台所で鼻歌を歌っていたアストラッドの声に惹かれ、レコーディングを薦めたのが彼女のデビューのきっかけとされています。この時に作られた名作「Getz/Gilberto」の中で、全ての歌詞をポルトガル語で歌ったジョアンに対し、アストラッドは英語の詞を歌ったことで全米でジョアン以上の人気を獲得することとなり(その辺、アメリカ人は本当に単純だと思う。いい悪いというわけではなく)、その後『ボサノバの女王』として世界中で人気を博することとなったのでした。
このアルバムは、彼女がスタン・ゲッツと元夫の作品でデビューしてから8年後に、その作品で名声を手にしたプロデューサーのクリード・テイラーのもとで作られた作品です(レーベルは違うけどね)。前回共演したサックス奏者はクールなスタン・ゲッツでしたが、今回はスタンリー・タレンタインというバリバリのファンキー系サックス奏者と共演しています。とはいえこの作品でのタレンタインは全然ファンキーじゃなくて、むしろキーボードとアレンジを担当したデオダートの影響でかなりフュージョン寄りの耳に優しくて聴きやすい仕上がりとなっています。
このアルバムに収録されている曲は、半分がデオダートやジョルジ・ベン、ミルトン・ナシメント、エドゥ・ロボといったブラジル人ミュージシャンの曲で、残りはバート・バカラックやハリウッド映画のサウンドトラックという、良くも悪くも「さすがクリード・テイラー!」とでもいうべき絶妙の売れ筋路線をきっちり押さえたものになっていて、安心して聴くことが出来ます。このアルバムはプロデューサーが同じ上にテナーサックス奏者との共演というあたりで、ちょっと気を抜けば「Getz/Gilberto」の2番煎じになっちゃうところを、デオダートのアレンジとロン・カーターやトゥーツ・シールマンズといった名ジャズ・ミュージシャンの力でアストラッドの違った魅力を引き出すことに成功した作品であり、ブラジル音楽とジャズの幸せな結婚生活を充分に楽しむことが出来る名作だと思います。
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