モダン・ジャズ・カルテットといえば、最も長く活動したジャズバンドのひとつとしても有名ですが、クラシックよりのアプローチをしたバンドとしてもその名を知られています。それはひとえにこのバンドのピアニストだったジョン・ルイスの好みを反映しているからなんですが、今回はそんな彼らのアルバムから、軽めだけどエレガントな一枚を紹介することにします。

 というわけで、この「Place Vendome」というアルバムは、彼らがスウィングル・シンガーズというボーカル集団と一緒に作った作品です。私はスウィングル・シンガーズという人達のことはよく知らなかったんですが(ジャケットを見る限りでは、男4人+女4人の白人のグループらしいです)、1年くらい前に渋谷のHMVで900円くらいで叩き売っていたので、なんとなく買ってみました。聴いてみたら「ダバダバ〜」とか「シャバダバ〜」とか歌う人達で、それがジョン・ルイスの書いた曲やバッハの『G線上のアリア』に乗っかって、(少なくとも同じシャバダバで有名な11PMのテーマの3倍くらい)華麗に響くのでした。ジャズ・ミュージシャンによるバッハといえば、ジャック・ルーシェがとても有名ですが、私はこっちの作品の方がお洒落なので好きです。

 このバンドはどちらもアメリカのグループですが、アルバムのタイトルがパリの地名にちなんでいるせいか、なんだかアメリカの気安さとヨーロッパっぽい優雅さが一緒になったような、そんな印象を受けます。その絶妙なバランスは、きっと少なくとも日本人には受けるんじゃないかと思います。このアルバムはそんなに名盤とかいう話は聞いたことがないんですが、CDへのリマスターを日本人が東京で手がけているのを見ると、ますますそんな気がしてきます。きっと本物のジャズファンはあまり興味を持たない類の作品という気はしますが、私のような半端ジャズリスナーには、本当に重宝する一枚といえます。特に秋はね。

 ちなみにこのジャケットに写っているスウィングル・シンガーズの面々は、みんな白い歯を見せつけるように嘘臭い笑顔を浮かべています。しかし一緒に写っているMJQの面々はちょっと笑顔を浮かべているだけで(ミルト・ジャクソンに至っては笑ってもいない)、その辺になんともいえない不自然さが漂っています。このアルバムは1966年に制作されたものですが、なんだかその辺に当時の黒人の立場をはじめとする時代背景が読みとれるような気がします。