今年の5月に知り合った、松本在住の知り合いとしては唯一音楽の趣味が抜群に合う友人は、このアルバムに収録された『ナルディス』がとにかくたまらなく好きなのだそうです。ナルディスはマイルス・デイビスがキャノンボール・アダレイに送った曲なのですが、実際にはピアニストの名演が多く、その中でも一番素晴らしいと私が思っているのも、確かにこのアルバムの演奏です。もともとオリエンタルで美しい曲ですが、それがビル・エバンス・トリオ(ラファロ&モチアン)の手にかかると、さらに・異常なまでに格調高く響いてきて、本当の意味でのインテリジェンスを持つ(と私が感じている)彼には、そこがよかったんじゃないかと思います。というわけで、今週はビル・エバンスの『エクスプロレイションズ』を紹介してみます。

 ビル・エバンスは、個人的には『ジャズを聴き始めるきっかけとして最もふさわしいと思われるミュージシャン』のひとりであり、また『秋になると聴きたくなるピアニスト・ランキング、半永久的ナンバーワン』な存在でもあります。そういうわけで、このサイトでももう何度も紹介しているので詳細は省きますが、このアルバムは、そんな彼の長いキャリアの中でも最高のトリオと言われているベースのスコット・ラファロ、ドラムスのポール・モチアンと組んで作り上げた4枚の傑作のうちの1枚です。「ワルツ・フォー・デビー」「ポートレイト・イン・ジャズ」と比べるとちょっと知名度は落ちますが、しかしこの作品が最も耽美的であり、歳を重ねるごとに良さが理解できるアルバムではなかろうかと思ったりもしています。

 ちなみにイントロダクションで友人の話に触れてみましたが、このアルバムに収録されている曲の中では、実は私個人としては「ナルディス」より「イスラエル」の方が好きだったりします。まあこの2曲がこのアルバムにおける最も有名な演奏なので、どちらが好きかというのはただ単に好みの問題でしかないのですが、この「イスラエル」で聴くことが出来る上品なスウィング感は、このトリオにしか出せない気がします。それからそんなに有名な演奏というわけじゃないんですが、2曲目の「Haunted Heart」で聴ける切ないバラードも、私の心をつかんで離しません。特に雨の降る寂しげな秋の夜には、過去に起こったあんなことやこんなことを思い出しちゃったりして、涙なしには聴けないほどです。

 と、久しぶりに思いつくままにまとまりのない文章を書いてしまいましたが、このアルバムで聴けるビル・エバンス・トリオの演奏は、非常に統一感のある、三位一体となった美しさを誇っています。こんな駄文では、このアルバムの持つ美しさの1割も伝わっていないのではないかと危惧していますが、私にはこんな駄文しか書けないのでご容赦下さい。とにかく買って聴いてみましょう。あなたがオトナだったら、きっとこのアルバムが気に入るだろうと思います。