8月のこのコーナーはラテンを中心に取り上げてきたので、今月は定番ジャズでも紹介しようかと思っていたのですが、さっき風呂桶に浸かっていたときに、なぜだかわかりませんがピーター・ゲイブリエルの「ビッグ・タイム」がリフレインし続けていたので、これはきっと神の啓示に違いないと思い、紹介してしまうことにしました。ジャズのサイトのくせしやがっていつまで他のジャンルをほっつき歩いているのだとむかっ腹立てている人もいるかと思いますが、今どきの渋谷界隈では80年代が流行っているとのことですし、来週からは(たぶん)ジャズを紹介すると思うので、何とぞご容赦下さい。

 ピーター・ゲイブリエルは、たぶん私と同年代の人(つまり30歳前後)はほとんど全員知っているとは思うのですが、80年代の風俗が新鮮だと感じてしまうような若い読者のために説明すると、フィル・コリンズがジェネシスで歌う前にジェネシスで歌っていた人です。70年代の終わりにソロ活動を始めて、80年代もそこそこ売れたアーティストであり、90年代にはワールド・ミュージックに深く傾倒していった人です。音作りに加えて映像表現にもすごくこだわりを持っている人のようで、「Sledgehammer」のプロモーション・ビデオとか、今見てもよくできた作品だと思います。

 このアルバムは、90年に発売になったベスト・アルバムです。1977年の最初のソロアルバムから90年に吹き込んだ新作までをカバーしています。私が風呂場で鼻歌として歌っていた「ビッグ・タイム」ももちろん収録されていて、風呂から上がって聴き直して非常に満足しました。最初はオリジナルの「So」(アルバム名です)の方で聴こうと思ったのですが何故か見あたらず、仕方がないのでベスト・アルバムで聴きました。ま、どっちでも曲は一緒なので構いやしませんけどね。ちなみにこのベスト・アルバムには社会派ソングからおバカな歌までてんこ盛りで、非常にお買い得なのですが、今聴くとバカな歌も社会風刺として立派な歌に聞こえます。私もそれだけ成長したということでしょうか。

 というわけで、彼の音楽自体は今聴いても(少なくとも私は)古くさい印象を全く受けませんが、アルバム・ジャケットで彼が着ているスーツはどう見ても80年代チックなスタイルです。肩幅といい襟といい素材の光沢具合といい、今どきこんなものを着て街を歩いていたら後ろ指さされてしまうように思うのですが、80年代がリバイバルしているということは、こんな服装をした人がまた街中を闊歩しちゃったりするのでしょうか。それはある意味すごく格好悪い世の中のようにも感じるのですが、きっとそう思ってしまう私の方が時代の波に乗れていないのでしょうね。乗る気もないので構いませんけど。