久しぶりにジャズらしいジャズのアルバムを取り上げてみようということで選んだのが、ハービー・ハンコックの『スピーク・ライク・ア・チャイルド』です。このアルバムは、モダン・ジャズ好きの多くの人に好かれ、一部では熱狂的に愛されている作品であり、今までの「ジャズのサイトのくせしやがってジャズから脱線し続けたCD紹介」の罪滅ぼしの意味も込めてセレクトしてみました。いや、まあホントのことを言えば、個人的には別にジャズから脱線し続けても構わないんだけどさ、秋になったのでジャズもいいよな、と思って久しぶりに聴いてみたらやっぱり名作だったので紹介してみたということです。

 ハービー・ハンコックは、チック・コリア、キース・ジャレットと並び、今どきのジャズ・ピアノ界で名実ともに頂点に立っている人です。彼の足跡に関しては、このサイトの別のページでも触れているはずなのでここには書きませんが、最近では今どきのポップスをジャズにアレンジした作品や、ガーシュウィンに関するコンセプト・アルバムや、そして最新作のクラブ・ジャズといった具合に話題作を連発しているミュージシャンであり、還暦を迎えても枯れることのないその才能とバイタリティには一人の人間としてもすげえな、と思ったりしています。とはいっても私は彼のように創価学会に入ることはないので、勧誘(というか折伏)はお断りしますね>全国の聖教新聞読者の皆さん。

 このアルバムは、名作中の名作『処女航海』を発表してから3年後に、満を持して発売された作品です。路線としては『処女航海』的な、いわゆる「新主流派」なものですが、『処女航海』と比べると音楽的にもバンドの構成的にももうちょっと難しい音楽といった感じがします。といっても難解すぎることもなく、その辺のバランスの絶妙さがハービーの商売上手なところだな、とうがった見方をすることもできます。いや、私はそんな根性の悪い捉え方はしてませんけどね、そういう見方も可能であると書いてみただけのことですので、勘違いしないように。

 このアルバムで私が一番好きな曲は、やはりほとんどの人と同様に、このアルバムのタイトル曲である「スピーク・ライク・ア・チャイルド」です。この曲はハービーが「無垢な心とは何か」を考えながら書いた曲らしいんですが、そして僕は今でも充分に無垢なのでそんなことを考える必要すらないのですが、3本のホーンをバックに美しいメロディを奏で続けるハービーには、とても無垢な私も感動しましたし、あまり無垢じゃないと自覚している正直な方々にはもっと価値がある音楽と言えましょう。もちろんその他の曲も素晴らしく、買って損はない一枚ですので、秋の夜長はこのアルバムを聴きながら、そして「奥さんとキスしているシルエット写真を恥ずかしげもなくジャケットに使ってるハービー」を眺めながら、無垢とは何か、そして愛とは何かを考えてみるのもいいかもしれませんね。