今週、ブルーノート東京でライブが行われるディープ・ルンバのアルバムです。ここではキップ・ハンラハン名義としてありますが、彼はミュージカル・ディレクターであって、実際の演奏はしていません。

 キップ・ハンラハンという人は、ニューヨーク出身のプロデューサー兼パーカッショニストです。彼の音楽の特徴は、その独自の感性に基づいて生み出される、ラテンとジャズをブレンドさせたようなサウンドです。ニューヨークっぽい喧噪、ラテンの官能美、アフリカンな力強さといった要素がすべてぐちゃぐちゃに入り交じった彼の音楽を聴いていると、自分が別の世界に連れて行かれてしまう「精神の小旅行」とでもいうべき感覚に襲われます。これは彼の音楽があらゆる制約から解放されているということだと思うし、その音世界にどっぷり浸ることで、頼るものが何一つない、ある意味不安な気分を増幅させてしまう、しかし本当の意味での「自由」というものが味わえるような気がします。

 この「ディープ・ルンバ」という彼のプロジェクトは、キューバのストリートで黒人奴隷達の娯楽音楽として生まれたルンバを一度解体し、再構築するというものです。彼の手によって再構築された「ディープ・ルンバ」という音楽は、ルンバが成立した当時の強烈なパワーはそのままに、しかしあらゆる制約から解放されたことによって、より自由に弾けているといった印象を与えます。聴きようによっては前衛的に聴こえなくもないですが、そしてその分、初心者には取っつきにくい音楽かもしれませんが、このパーカッションの力強さは前衛というよりむしろ原始的な感じがします。きっとライブはすごいことになるんだろうな、と今からかなり期待しています。

 で、そのライブに先立ち、1月9日に新宿のタワーレコードで行われた彼のトークショー(?)に行ってきました。それによるとディープ・ルンバというプロジェクトは、いつでも一定の場所にとどまることはせず、毎回その時点で真実だと思われる演奏をしていくんだそうです。CDの演奏者のうち、何人かは今回来日していないようで(「彼らは収監されているので来日できなかった」とハンラハンは言っていたが真偽の程は不明)、それによって演奏も違ったものになるだろうということでした。というわけで、このCDを聴いてもあまりライブの予習にはならないかもしれませんが、一応オススメしておきます。

 ちなみにこれを読んでライブに行ってみようかな、と思った方、その後のサイン会での彼の発言によると、行くなら水曜日以降の方がバンドとしてまとまったいい演奏が聴けるようです。月・火はあまりよくないそうな。私は今の予定では金曜日に行くつもりなので、きっと素晴らしい演奏が聴けるんだろうな。楽しみ楽しみ。