このところ、このコーナーでは比較的「マトモ」というか、ストレートなジャズのアルバムをたくさん取り上げてきましたが、今回はちょっとハズしてみました。ジャズ界随一のソウルフル・ピアニスト、ラムゼイ・ルイスのボサノバ・アルバムです。う〜ん、このセンスのひねくれ具合に自画自賛(笑)。

 ラムゼイ・ルイスという人は、こちらで紹介しているヤングさんやホルトさんと一緒に「The In Crowd」という名の(当時としては)極めてノリノリ・ダンサブルなアルバムを発表した、ソウルフルな演奏が売り物のピアニストです。その後、アルバムを発表するごとにどんどんファンク度を深め、70年代にはあの Earth, Wind & Fire なんかと一緒にアルバムを作っちゃったほどの、いわゆる「濃い」ミュージシャンです。

 このアルバムは、前述の「The In Crowd」が大ブレイクするおよそ3年前に、当時のボサノバ・ブームの上にのっかって製作されたアルバムです。当世きってのソウル野郎であるラムゼイ・ルイスにボサノバ・アルバムを作らせるという無謀さ具合を見れば、当時いかにボサノバがアメリカで絶大な人気を持っていたのかがよくわかります。私もこのアルバムを初めて店頭で見かけたとき、「こんな濃いピアニスト、ボサノバでは絶対にいねえよっ(笑)!」と、思わずツッコミを入れてしまいました。ラムゼイ・ルイスのコテコテ・サウンドが、明るく爽やかなボサノバと合うとは到底思えなかったからです。でも何だかとても気になって、買って聴いてみたらこれが思いのほか素晴らしかったです。いや、まあ、ラムゼイ・ルイスが演奏している時点で普通のボサノバを期待して聴くのは間違っているわけで、そんな彼がジャズマンらしく「オレ流」を貫いて作り上げたこのアルバムは、それだけに極めてオリジナリティの高い、面白い作品になったのでした。「アメリカの黒人が演奏するブラジル音楽」だと思うと、かなりよく出来ています。

 特にオススメなのは1曲目の「オルフェのサンバ」と5曲目の「オ・パト(あひる)」ですね。このノリのいい曲を聴いていると、さすがラムゼイ・ルイス、こんなコテコテのサンバ、他では絶対聴けないぜ! まるでアヒルも踊りだすかのようだねっ! と言いたくなるほどの(粘りっこい)ノリの良さを発揮してます。もちろん、ボサノバ特有の涼しげな感じはまるでなし。サイコーっす(笑)。それから「どの辺がボサノバ・チックなのか全くわからないアルバム・ジャケット」の力の抜け具合も個人的にはオススメです。